「シーシャ」って本当に害が少ないの?
石田雅彦ライター、編集者
6/28(水) 11:43
(提供:イメージマート)
世界的にシーシャ(水タバコ)が特に若い世代を中心に広がっているようだ。日本でも都市部の繁華街などでシーシャの喫煙可能店が増え始めているが、このシーシャ、健康への害はないのだろうか。
シーシャって何?
シーシャというのは、イスラム圏やインドなどで行われてきたタバコの喫煙法の一つだ。水タバコというように、水に通したタバコ煙を吸い込んで喫煙する。
一般的なシーシャの喫煙具は、タバコの葉が置かれる火皿、ホース、水が満たされた容器、ホースにつながれたマウスピース(吸い口)で構成されている。アルミホイルなどの上に置かれた葉タバコは、タールでペースト状に固められ、これが火皿の木炭などによって加熱される。加熱された葉タバコの煙を喫煙者が吸い込むことで容器の水の中へタバコ煙が導かれ、水で冷却されたタバコ煙を喫煙者がさらに吸い込む。
シーシャは、フルーツやメンソールなど多様なフレーバーが用意されていることもあるが、若い世代が集まるクラブやカフェなどで魅力的な文化であるように訴求するマーケティングが奏功し、欧米や日本などイスラム圏以外にも広がりつつある。
また、シーシャはタバコより有害性が低く、中毒性も低いという誤解があり、本格的な喫煙へのゲートウェイになる危険性も指摘され、公衆衛生上の理由からシーシャに関する正しい情報の提供や禁煙サポートが求められている(※1)。なぜなら、シーシャを吸うことによるニコチンの量は紙巻きタバコと同等かそれ以上になるからで、それによってニコチン依存症になってしまい、喫煙者はシーシャ以外のタバコ製品に手を出すようになるからだ(※2)。
有害性はどうなの?
では、シーシャを吸引、喫煙すると、タバコと同じような有害物質を摂取することになるのだろうか。タバコ煙を水に通すことで、そうした有害物質が除去されるのだろうか。
これについては、特にシーシャでの喫煙が長く続いてきたイスラム圏などでの研究が多い。
シーシャが水をくぐって出てきた煙を分析すると、発がん性物質であるタバコ特異的ニトロソアミン、多環芳香族炭化水素、ホルムアルデヒドなど、また、ベンゼン、一酸化窒素、重金属といった有害物質が含まれていることが明らかになっている(※3)。特に、最近では電気的に加熱する器具もあるが、一般的な喫煙具ではタバコ成分を加熱するために木炭を使い、タールでペースト状に固めているものが多いので、多環芳香族炭化水素、二酸化炭素、タールの量が多くなるようだ。
このため、シーシャを吸うことで、発がん性物質や有害物質も同時に吸い込み、がん、心血管疾患、呼吸器疾患、一酸化炭素中毒、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などのタバコに特有の病気にかかるリスクが上がる(※4)。
ニコチンフリーも受動喫煙も
では、葉タバコを含まない、つまりニコチンフリーのシーシャではどうだろうか。これまでの研究によれば、こうしたシーシャにニコチンは確かに含まれないが、タールなどの発がん性物質、一酸化窒素、二酸化炭素、多環芳香族炭化水素といった有害物質は同じように含まれていることがわかっている(※5)。
また、シーシャの受動喫煙についても研究があり、シーシャ提供店の空気中の有害物質であるホルムアルデヒド、アセトアルデヒドは健康へ悪影響を及ぼす許容値を大きく超えているようだ(※6)。
筆者も提供店でニコチンフリーのシーシャを吸ってみたことがあるが、水をくぐらせるために長く息を吸い込むことで、一回ごとの吸引量が多くなった。紙巻きタバコや加熱式タバコより、深く吸引することで肺の奥へタバコ煙が吸い込まれる危険性がある。
また、シーシャ店やクラブは長い時間、滞在することが多く、シーシャ由来のタバコ煙にさらされるリスクは吸引者、受動喫煙者、従業員などで高くなるだろう。
以上をまとめると、シーシャの有害性は他のタバコ製品と同じで、がん、心血管疾患、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器疾患などのタバコ関連の病気にかかるリスクもある、ということになる。
日本でもシーシャの喫煙者や水タバコを提供する喫煙目的店が増えていると考えられるが、筆者が厚生労働省に確認したところ、その全容を把握しようとする危機感は感じられなかった。
どのタバコ製品にもいえることだが、どんな成分が入っているかわからない製品を吸い込み、呼吸器から体内へ送り込むのは危険だ。ネットではシーシャの器具も安価で売っているが、他のタバコと同様、シーシャにも手を出さないほうがいいだろう。